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試験不安を克服する方法|本番で実力を発揮するための直前対策

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家で解いたときは、スラスラ進んだ。

解き直しも、ほぼ満点だった。

それなのに、テスト当日の答案は、空白と凡ミスだらけ。

「どうして本番になると、できなくなるの?」
と思わず聞きたくなる気持ち、よく分かります。

でも、聞かれた子どもが一番知りたいのは、おそらく自分自身です。

家で解けて本番で解けないのは、
実力が消えたからではありません。

不安が、頭の中の"作業台"の場所を取ってしまうからです。

そして、試験の直前10分に不安を紙へ書き出すと、
不安の高い生徒の得点が上がったという研究があります。

数学での作業台の重要性と不安の影響

数学の問題を解くとき、
頭の中ではこんなことが起きています。

  • 問題文の条件をいくつも覚えておく
  • 覚えたまま、式を立てる
  • 繰り上がりや符号に気をつけて、計算を進める

この「一時的に覚えながら、同時に考える」ための場所を、
ワーキングメモリ(作業記憶)と呼びます。

机にたとえると、作業台です。

数学は、この作業台を広く使う教科です。

では、そこに不安が入り込むと、どうなるのでしょうか。

アッシュクラフトさんとカークさん(2001年)は、
不安の低い人・中くらいの人・高い人を15名ずつ(計45名)集めて、
次の課題を出しました。

足し算をしながら、同時に文字を6つ覚えておく
という課題です。

結果は、こうでした。

  • 繰り上がりのある足し算で、不安が高い人ほど間違いが増えた
  • 繰り上がりによる間違いの増え方は、不安が低い人で10%、中くらいで17%、高い人で27%
  • 不安が高い人の間違いの割合は、39%
  • 文字を覚えるだけの課題、繰り上がりのない足し算では、不安による差はほとんどなかった

つまり、不安が高い人は「計算ができない」のではありません。

覚えながら計算する、
という作業台をたくさん使う場面だけ、
成績が落ちたのです。

研究者は、

「失敗したらどうしよう」
という心配が作業台の場所を使ってしまうからだ、

と説明しています。

家では心配ごとが少ないので、
作業台は広く使えます。

本番では、心配ごとが居座って、
使える場所が狭くなる。

同じ問題でも、使える余裕が違う
のです。

40年の指導経験から見えてきたのは、本番で崩れる子ほど、
試験の直前に「失敗したらどうしよう」を頭の中で何度も回している、
ということです。

試験直前に不安を書き出す効果とその理由

占領された作業台を空けるために、研究で試された方法があります。

ラミレスさんとバイロックさん(2011年)は、試験の直前の10分間に、
いま感じている不安や心配を、そのまま紙に書く
方法を調べました。

実験1(大学生20名・数学の課題)
お金がもらえる、ペアで責任を負う、ビデオに撮影される、といったプレッシャーをかけたうえで、直前の10分間の過ごし方を比べました[2]。

  • 静かに座っていたグループ:正答率が12%下がった
  • 気持ちを書いたグループ:正答率が5%上がった

実験3・4(高校1年生106名・生物の期末試験)
実際の期末試験の直前に、同じ方法を試しました。普段の試験不安が高い生徒と、低い生徒に分けて比べています[2]。

  • 不安が高い生徒:書いたグループは、書かなかったグループより得点が約6%高かった(成績評価でいうと、B-とB+くらいの差)。不安の低い生徒と同じくらいの成績になった
  • 不安が低い生徒:書いても書かなくても、差はなかった

大切なのは、これが
「全員に効く魔法」ではなく、
「不安の高い子に効く方法」
だという点です。

注意点もお伝えします。

  • 高校生の実験の教科は生物で、数学の本番で直接確かめたものではありません
  • 効果は約6%で、「必ず点が上がる」というものではありません
  • 実験はアメリカで行われました

それでも、
「道具も費用もいらず、10分でできて、不安の高い子で効果が示された」
という点は、家庭で試してみる価値があります。

親がサポートできる不安書き出しの具体的手順

1. 試験直前の静かな時間の確保方法


研究では、試験の直前に行っています。

出かける前の家でも、試験会場の待ち時間でも構いません。

2. 不安を紙に書き出す具体的な方法


「いま心配していること、全部書いてみよう」
と伝えます。

きれいに書かなくて大丈夫です。

研究で書かせたのは
「これから受ける試験についての、考えと気持ち」
でした。

  • 「この単元が出たらどうしよう」
  • 「また頭が真っ白になったら嫌だな」
  • 「失敗したら、お母さんをがっかりさせる気がする」
  • 「いま、お腹がきゅっとしている」

3. 親が内容を見ないことの重要性


「書けた?」
とだけ聞きます。

読まない、直さない、励まさない。

書いた紙は、折りたたんでしまうか、
捨ててかまいません。

親が読むと、本音が書けなくなります。

4. 無理にやらせないことの重要性


書くことで不安が強くなる子もいるかもしれません。

嫌がるなら、やめましょう。

不安がとても強くて日常生活に影響が出ている、
体調を崩す、登校がつらい、といった場合は、
学校の先生やスクールカウンセラー、
医療機関に相談してください。

「落ち着いて」という言葉の効果とその限界

もう一つだけ、補助的な話をします。

テストの朝、
「落ち着いてやればできるから」
と声をかける方は多いと思います。

この一言が逆効果だと、
直接比べて確かめた研究は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。

心を込めた一言には、安心を伝える力もあります。

そのうえで、気になる研究があります。

ジェイミソンさんたち(2016年)は、
アメリカの短大で数学の補習を受ける学生93名を2グループに分けました。

  • 一つ目:「ドキドキや動悸などの体の反応は、試験の役に立つこともある」と説明された
  • 二つ目:「ストレスは無視するように」という資料を渡された

結果、一つ目のグループは、数学の試験への不安が低く、成績も上がりました。

「ストレスは無視して」は、
「落ち着いて、気にしないで」に近いですが、
同じではありません。

言えるのは、
「緊張を消そうとするより、緊張の意味を捉え直すほうが、
助けになる可能性がある」
というところまでです。

試してみる一言の例です。

  • 「ドキドキしてきたら、体が本気を出す準備をしているってことだよ」

これは提案であり、家庭で効果が確かめられたものではありません。

まとめ:本番で実力を発揮するための作業台の守り方

  • 不安が高い人は、頭をたくさん使う場面で間違いが増える[1]
  • 家で解けて本番で解けないのは、実力が消えたからではなく、使える余裕が減ったから
  • 試験の直前10分に不安を書くと、不安の高い高校生の得点が約6%高かった(106名・生物)[2]
  • 「落ち着いて」と直接比べた研究はないが、緊張の意味を捉え直す説明が助けになった例もある[3]

次の試験の前に、こう声をかけてみてください。

「出かける前に、心配なことを10分だけ、紙に書いてみようか。
お母さんは読まないからね」。

その10分が、家で出せていた力を、
本番に近づける最初の一歩になります。


大岩裕之(おおいわ ひろゆき) 雙葉進学教室 塾長。数学教育学修士・専修免許状取得。ロンドン・ニューヨーク・上海など6都市での指導を経て、2015年より半田市にて開校。指導歴40年・数学・理科専門。

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