家庭学習のお悩み解決

子どもがテストで時間が足りない理由と家庭でできる練習法

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返ってきた答案を見ると、
前半はていねいに解けているのに、
後半の大問が丸ごと空白。

「どうしたの?」と聞くと、
返ってくるのは「時間がなかった」。

「だらだら解いていたからでしょ」
と言いかけて、ぐっと飲み込む。

かといって、「時間を気にしなさい」と言えば、
かえって慌ててミスが増えそうな気もする。

そんな板挟みを感じている保護者の方は、少なくありません。

「時間がなかった」は、
単なる言い訳や段取りの悪さだけではないかもしれません。

時間が迫ると、人は解き方そのものを、
単純な方向に切り替えてしまうことが、
研究で報告されています。

叱る前にその仕組みを知り、
家で「時間の使い方の判断」を練習してみる。

それが、今回のご提案です。

時間が迫ると解き方が単純化する理由

数学で時間のプレッシャーがどう影響するかを整理した研究に、
カヴィオラさんたちのレビュー(2017年)があります。

2,534件の検索結果から、
条件に合う19本の論文を選び出してまとめたものです。

そこで紹介されている研究のなかから、
3つ例をご紹介します。

① 期限が短いと、「覚えている答え」を引き出す方法が増えた


キャンベルさんとオースティンさん(2002年)の研究では、
答えを出すまでの期限を0.75秒(短い)と2.5秒(長い)で比べました。

大きな数の問題で、期限が短いときは、
記憶から答えを引き出す方法が増え、
手順を踏んで計算する方法
が減りました。

② 期限をつけると、「ありがちな間違った考え方」を選びやすくなった


ギラードさんたち(2009年)は、
比例の問題に17秒の期限をつけました。

すると、
誤った“ありがちな比例の考え方”
を選びやすくなりました。

③ 大学生でも、子どもっぽい単純なやり方に戻った


マクニールさんたち(2010年)やチェスニーさんたち(2013年)の研究では、大学生が時間制限のもとで、子どもによく見られる
単純な戦略に移ったと報告されています。

つまり、

時間が迫ると、「ていねいなやり方」から
「手早いやり方」へ、
気づかないうちに切り替わりやすい

のです。

切り替えた先のやり方が、
その問題に合っていれば問題ありません。

でも、合っていないときは、
ミスにつながります。

ここで、大切な但し書きがあります。

このレビュー自身が、次のように述べています。

  • 研究の数が少なく、結論は部分的である
  • 時間のプレッシャーは、常に不利とは限らない
  • 手早いやり方が、速さの面で最適になる場合もある

「速く解くことが悪い」
という話ではありません。

問題に合った解き方が選べなくなる
ことが課題なのです。

時間不足の答案に見られる共通パターン

40年の指導経験から見えてきたのは、
「時間がなかった」と言う子の答案には、
いくつかの共通した形がある、
ということです。

  • 最初から順番に解き、難しい問題で長く立ち止まる
  • 後半に手をつける頃には残り時間が少なく、焦って書き急ぐ
  • 簡単に点が取れる問題が、後半に残ったまま終わる

これは、能力や努力の問題ではなく、
「どこに時間を使うか」という判断
の問題であることが多いのです。

そして、時間が迫るほど、
落ち着いて判断することが難しくなります。

家庭で試せる時間管理練習法(効果未確認)

ここからは、家庭でできる練習をご提案します。

先にお伝えしておくと、

「家でのタイマー学習で、
本番の意思決定力が鍛えられる」

ことを直接確かめた研究は、
私が調べた範囲では見つかりませんでした。

たとえば、
高校生を対象に時間管理のスキルを高める取り組みを試した研究(2つの準実験・143名と149名)でも、
時間管理スキルの自己評価に、はっきりした向上は確認されていません。

ですから、これから紹介する3つは
「効果が証明された方法」ではなく、
「試してみる価値がありそうな練習」
です。

練習1:週に1回、本番と同じ時間で過去問を解く

普段の勉強は、余裕のある時間でていねいに。

週に1回だけ、本番と同じ制限時間で、
過去問や模試形式の問題を解きます。

タイマーは、
急かす道具ではなく、本番の状況を再現する道具
として使います。

練習2:解く前に「時間の配分メモ」を書く

問題用紙を開いたら、
まず1分だけ使って、メモを書きます。

  • 大問ごとの目安の時間(例:大問1は10分、大問2は10分…)
  • 目安を過ぎて止まったときの合図(例:「いったん飛ばして、次へ」)
  • 見直しに残す時間

本番で慌ててから判断するのではなく、
慌てる前に決めておく
のがポイントです。

練習3:終わったあと、「どこで時間を使った?」と事実を聞く

解き終わったら、点数より先に、
時間の使い方を一緒に振り返ります。

  • NG:「なんでこんなところで時間をかけたの」
  • 言い換え:「この問題には、何分使ったかな?」
  • 言い換え:「ここで次に進むとしたら、何分の時点がよさそう?」

責める質問ではなく、
事実を見つける質問
にします。

タイマー使用時の注意点

タイマーは、使い方しだいで、
かえって慌てさせてしまうこともあります。

次の点に気をつけてください。

  • 普段の宿題は、タイマーなしでもかまいません。 ていねいに考える時間も大切です。
  • 「早く」と言うのではなく、「本番ではこの時間だから」と伝えます。
  • 慌ててミスが増えるようなら、いったんやめます。 不安が強い、タイマーを見るだけで固まる、というときは無理をしません。
  • 速く解くこと自体を、目標にしないでください。目標は、問題に合った解き方を選ぶことです。

まとめ:時間不足の原因を理解しよう

  • 時間が迫ると、解き方が単純な方向に偏りやすい
  • 速いやり方が悪いわけではなく、問題に合わないときにミスが出る
  • 家でのタイマー学習の効果は、確かめられていない。試してみる価値のある提案として取り入れる
  • 練習のポイントは、本番と同じ時間で解く・配分メモを書く・事実を聞いて振り返る

次の試験のあとで、
「時間がなかった」と言われたら、
こう聞いてみてください。

「どの問題に、いちばん時間がかかったかな?」。

責める代わりに、一緒に時間の使い方を見る。

それが、慌てても崩れにくい解き方を育てる、最初の一歩になります。

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